ローディング画面は、退屈を設計できるか
要点
- ローディング画面は、技術的な待ち時間を、心理的に耐えうるものへ変換する設計領域である。
- 進捗バーやスケルトン表示は、体感的な待ち時間を実際より短く感じさせる。
- ニールセン・ノーマン・グループは、応答までの時間ごとに必要なフィードバックを整理してきた。
- ただし、見せかけの進捗で待ちを演出することは、信頼を損なう危うさも持つ。
アプリを開くと、コンテンツが現れるまでの一、二秒、灰色の枠がうっすらと並ぶ。やがてそこに文字と画像が流し込まれていく。この一、二秒は、サーバーがデータを返すまでの純粋な待ち時間だ。だが、その待ちをどう見せるかによって、同じ二秒が、長くも短くも感じられる。ローディング画面は、退屈を設計する小さな実験室である。
技術の待ちと、心理の待ち
待ち時間には、二つの層がある。一つは、処理が実際に終わるまでの技術的な時間。もう一つは、利用者がそれをどれだけ長く感じるかという心理的な時間。この二つは一致しない。何のフィードバックもない真っ白な画面で二秒待つのと、進捗が見える画面で二秒待つのとでは、後者のほうがはるかに短く感じられる。ローディング画面の仕事は、技術的な待ちを縮めることではなく、心理的な待ちを縮めることだ。
進捗を見せる
そのための定番が、進捗の可視化である。少しずつ伸びる進捗バー、回転するスピナー、コンテンツの形だけを先に示すスケルトン表示。いずれも「いま動いている」「もうすぐ終わる」という感覚を与える。ユーザー体験を長く研究してきたニールセン・ノーマン・グループは、応答までの時間に応じて、瞬時の反応・進行中の合図・別作業を促す案内と、必要なフィードバックが変わることを整理してきた。短い待ちにはスピナーで足り、長い待ちには残り時間の見通しが要る、という具合だ。
スケルトン表示が白い画面より好まれるのは、これから現れるものの輪郭を先に示すことで、待ちに見通しを与えるからだ。行列の心理と同じく、ここでも「あとどれくらいか」が分かることが、待ちを軽くする。
退屈を満たす
進捗を見せるのとは別に、待ち時間そのものを別の体験で満たす方向もある。かつてゲームのロード画面に小さなミニゲームや豆知識が添えられたように、空いた時間に何かを差し込む。空港のための音楽をブライアン・イーノが作ったのと、発想は近い。待たせる時間を消せないなら、その時間の感触を変える、という考え方だ。
正直な待ち、偽りの待ち
ただし、ここには倫理的な落とし穴がある。進捗バーのなかには、実際の処理とは無関係に、ただ一定の速度で伸びていくだけのものがある。利用者を安心させるための演出だが、裏を返せば、それは進捗を偽っていることになる。さらに踏み込んで、処理がとうに終わっているのに、あえて「いま頑張って計算しています」という画面を見せ、結果に重みがあるかのように装う設計も存在する。
こうした演出は、短期的には満足度を上げるかもしれない。だが、それが見せかけだと利用者に気づかれたとき、失われるのは一回分の信頼にとどまらない。ローディング画面は、待ちを和らげる場所であると同時に、正直さが試される場所でもある。退屈を設計することはできる。しかし、設計された退屈が誠実であるかどうかは、進捗バーの伸び方ではなく、その裏で何が起きているかによって決まる。
参照した資料
- ニールセン・ノーマン・グループ(Nielsen Norman Group)による応答時間とフィードバックに関する解説
- ブライアン・イーノ『Music for Airports』に関する言説